@熊野神社
はるか昔鎌倉時代、鎌倉と金沢の六浦という港をつなぐ道が作られた。
途中にそびえていた岩山を掘削して、この朝比奈切通しが生まれたらしい。
かつては交通の要所として栄えたそうだ。
岩壁の間に立つと、音の情報が突然少なくなり、ひんやりとした感覚になった。
そして切通しを抜けてしばらく進むと、熊野神社と名乗るものが構えていた。
建物は比較的に新しいようにも思えたが、幽遠な匂いを感じてしまった。
どこか長居をしてはいけないような雰囲気があった。
陽が落ちかけて薄暗く、また他に誰もいなかったせいもある。
遠くに高速道路を走る車の音がかすかに聞こえて、かろうじて現代文明を感じることは出来たが、それが逆に、一層頼りなく思えた。
外界から隔離されている心地がした。
さすまたのような石の棒が、大きなスダジイを支えていて、
これだけはちょっと可愛かった。